資金繰り
未回収の売掛金で資金繰りを悪化させないための進め方
2026.07.13
売上が計上されていても、入金されなければ家賃・給与・仕入代金は払えません。未回収の売掛金が生じたときに必要なのは、回収を楽観的に見積もることではなく、「入金が遅れる場合」と「当面入金がない場合」の両方で現金残高を見ることです。この記事は、その手順を三段階で示します。
ケン「帳簿上は売上あるのに、口座は空っぽや。これ、どう考えたらええんや。」
ナオ「売上が立つことと、現金が入ることは別なんです。未回収の売掛金があるときは、まず『いつ入るか分からないお金』として切り分けて考えます。」
ケン「そのうち入るやろ、って思っとったらあかんの?」
ナオ「入るか、いつ入るかが読めないときに『入る前提』で回すと、気づいたときには現金が尽きています。楽観の1案だけでなく、遅れる場合と当面ゼロの場合も並べて、いちばん厳しい案でいつ足りなくなるかを先に見ておきましょう。」
ケン「厳しい案から見るって、しんどいけど現実的やな。」
ナオ「その日が、相談を急ぐ期限になります。相手に頭を下げに行くのも、期限が来る前のほうがずっと話が通りやすいんです。」
1.売掛金台帳で事実を一行ずつ確認する
取引先、請求番号、発生日、金額、支払期日、実際の入金、遅延理由、根拠資料を一覧にします。決済代行サービスの未入金なら、決済日・取引番号・入金予定日に加え、取消・返金・チャージバックも分けて記録してください。支払期日を過ぎただけなのか、相手が倒産手続へ入ったのかで対応は変わります。契約書、請求書、納品・売上の証拠、通帳、連絡記録を保存し、法的手続が始まった場合は自社判断で相殺や商品引揚げを進めず、弁護士や管財人の案内を確認します。
2.資金繰り表で回収シナリオを分ける
資金繰り表は、前月繰越、現金売上、売掛金回収、仕入、人件費、家賃、税・社会保険、借入返済などを日付または月ごとに並べます。未回収額を予定どおりの収入として一度だけ置くのではなく、次のように分けます。
| シナリオ | 回収の置き方 | 見るポイント |
|---|---|---|
| A案 | 予定日に回収 | 楽観ケース。ここだけで判断しない |
| B案 | 一定期間ゼロ | 現金が最初にマイナスになる日 |
| C案 | 一部だけ回収 | 現実的な下限の確認 |
最も厳しい案で現金がマイナスになる最初の日が、相談を急ぐ期限です。支払先には期限前に事情を説明し、変更の可否と条件を合意しておきます。整理の型は未入金があるときの資金繰り表の作り方を参照してください。
計算例(説明のための仮の数字)
考え方をつかむための例です。実在の店の数字ではありません。未回収の売掛金が80万円あり、当月の現金売上が200万円、支払いが仕入・給与・家賃で合わせて250万円あるとします。A案(80万円が予定どおり入る)なら残高は回りますが、B案(当面ゼロ)にすると、支払いが集中する日に30万円ほど足りなくなる、といった形で不足日が浮かびます。C案として「半分の40万円だけ入る」も置くと、現実的な下限が見えます。数字はすべて例示です。ご自身の台帳で置き換えてください。
3.不足額・使途・返済原資を数字で説明する
金融機関へ伝えるべきは「困っている」という事情だけではありません。未回収によりいつ・いくら不足するか、資金を何に使うか、営業継続後の返済原資は何かを数字で示します。取引先倒産の影響を受けた事業者向けには日本政策金融公庫の取引企業倒産対応資金などがありますが、利用には要件と審査があります。公庫への相談準備や経営セーフティ共済の一時貸付も、加入状況や条件を確認しましょう。
全東信の影響を受けた店舗の場合
株式会社全東信の破産(2026年7月6日、大阪地裁)に伴い、日本政策金融公庫に特別相談窓口が設けられています(2026年7月13日時点)。セーフティネット保証1号は官報告示が予定されている段階で、信用保証協会が事前相談を受け付けています。いずれも回収や融資を保証するものではありません。未入金額の集計と、代替決済へ切り替えた後の入金サイクルを、同じ資金繰り表に反映してください。
よくある誤解
誤解1:売上が立っているなら、資金繰りは大丈夫。 売上(計上)と入金(現金)は別です。入金がなければ支払いには使えません。現金の動きだけを追う表を別に持ちます。
誤解2:相手が倒産手続に入っても、こちらで相殺や商品引揚げをすればいい。 法的手続が始まると、自社判断での相殺や引揚げが問題になることがあります。弁護士や管財人の案内を確認してから動きます。
誤解3:回収できそうな金額を、少し多めに見ておけば安心。 多めに置くほど不足日が後ろにずれ、対応が遅れます。安全側は「厳しい案」で、最初に足りなくなる日を早めに掴むことです。
よくある質問
Q. まだ入金が遅れているだけなのか、回収できないのか分かりません。
支払期日を過ぎただけの遅延なのか、相手が倒産手続へ入ったのかで対応が変わります。まず遅延理由を台帳に記録し、法的手続が始まっているなら管財人・裁判所の通知で状況を確認します。
Q. 資金繰り表はどれくらいの期間で作ればいいですか。
当面の資金ショートを見るなら13週間(約3か月)を週単位が目安です。回収シナリオごとに、最初に不足する日を確認します。
Q. 融資の相談では何を示せばいいですか。
いつ・いくら不足するか、資金の使途、営業継続後の返済原資の3点を数字で示します。要件と審査があるため、結果を保証するものではありません。
最初にやること
- 売掛金を取引先・請求・期日ごとに一覧化し、根拠資料を保存する。
- 回収予定・一部回収・当面ゼロの複数案で、現金が不足する最初の日を確認する。
- 不足額の使途と返済原資を説明できる形にして、支払先・金融機関へ期限前に相談する。
次に読む
出典・参考
- J-Net21「資金繰り表を活用する」(確認日2026-07-13):解説
- J-Net21「売掛金の回収状況を改善したい」(確認日2026-07-13):解説
- 日本政策金融公庫「全東信の破産手続開始に伴う特別相談窓口」(2026-07-10現在、確認日2026-07-13):案内
- 中小企業庁「金融支援」(確認日2026-07-13):案内
個別の判断は、管財人・裁判所・金融機関・税理士など担当機関・専門家へ確認してください。
