資金繰り
資金繰り表の書き方・記入例つき|数字が苦手でも作れる手順
2026.07.15
資金繰り表は、専門知識がなくても作れます。難しく見えるのは、埋める順番と、入るか分からないお金の置き場所が決まっていないからです。この記事は、全東信の未入金があって「表を作ったほうがいいのは分かるけど、どこから手をつけたらいいか分からない」という方向けに、記入の順番と、仮の居酒屋を例にした1か月分の記入例、そして週に一度の更新のしかたまでを、手を動かせる形でまとめます。表の考え方(未入金を別枠にする理由)は未入金があるときの資金繰り表の作り方で説明しているので、ここでは「実際にどう書くか」に絞ります(2026年7月15日時点)。
ケン「表が大事なんは分かった。けど、数字並べるん苦手やねん。空欄見てるだけで手が止まるわ。」
ナオ「最初から全部埋めようとするからです。順番があります。まず今ある残高、次に確実に入るお金、そのあと出ていくお金、最後に未入金を『別の枠』へ。この4ステップだけです。」
ケン「別の枠って、また分けるやつか。めんどくさいけど、理由があるんやんな。」
ナオ「はい。全東信の未入金は、いつ・いくら戻るかが手続きの中で決まるので、いまは足し込めません。別枠にしておけば、その枠をゼロにするだけで『いちばん厳しい場合』の表になります。二度手間になりません。」
ケン「なるほど。ほな、まず枠だけ作ってみるわ。」
ナオ「それでいいんです。きれいさは後回しで、まず現在地を1枚に載せましょう。」
記入の順番(この順で埋める)
- いちばん上に、今の残高を書く。口座残高と手元現金を足した「今日ある現金」を最初のマスに入れます。ここが出発点です。
- 確実に入るお金を入れる。現金売上、全東信以外の決済会社からの入金、回収予定の売掛金など、入る日と金額が読めるものだけを書きます。
- 出ていくお金を、期日順に入れる。仕入れ、給与(多くは25日)、家賃(月末など)、税・社会保険料、借入返済(約定日)を、それぞれの支払日に置きます。
- 未入金は「別枠」に、足さずに書く。全東信への未入金は、金額の合計には入れず、右端などの別の列にメモとして置きます。回収できるかは手続きで決まるためです。
- 各週末の残高を計算する。「週初の残高+確実に入るお金−支払い」で、その週末の残高が出ます。別枠の未入金は足しません。
- 最初にマイナスになる週を探す。そこが「危険週」です。相談や交渉で使うのは、この週と、不足する金額です。
1か月分の記入例(仮の居酒屋・実在の店ではありません)
ここからは、書き方をつかむための例です。数字はすべて説明用の仮のもので、実在の店の金額ではありません。設定は、月商およそ200万円の居酒屋で、カード売上の多くを全東信で決済していたため、そのぶんが未入金になっている、というものです。月初の現金は40万円、給与50万円は25日、家賃30万円と借入返済10万円は月末とします。1か月を4週に分け、週単位で並べると次のようになります。
| 週(例) | 週初残高 | 現金売上 | 他社決済入金 | 仕入れ | 給与・家賃・返済 | 週末残高 | 〔別枠〕全東信 未入金 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 第1週 7/1–7/7 | 40万 | +20万 | +5万 | −14万 | 0 | 51万 | (+20万) |
| 第2週 7/8–7/14 | 51万 | +20万 | +5万 | −14万 | 0 | 62万 | (+20万) |
| 第3週 7/15–7/21 | 62万 | +20万 | +5万 | −14万 | 0 | 73万 | (+20万) |
| 第4週 7/22–7/31 | 73万 | +20万 | +5万 | −14万 | −90万 | −6万 | (+20万) |
読み方はこうです。第3週まで残高は増えているように見えますが、第4週に給与・家賃・返済の90万円が重なり、週末残高が−6万円になります。ここが危険週です。右端の別枠を見ると、全東信の未入金が毎週20万円ずつ、1か月で合計80万円あります。これを「入る前提」で本文に足し込めば残高は足りて見えますが、別枠にして足さないからこそ、月末に6万円足りないことがはっきり出ます。相談で使うのは「未入金80万円」ではなく、「月末に6万円足りない」という不足額と、その起きる日です。この2つが言えれば、融資相談でも支払先との交渉でも話が前に進みます。
週に一度、更新する
表は一度作って終わりではありません。むしろ、作ったあとに毎週更新することで役に立ちます。おすすめは、週末(たとえば毎週金曜)に、その週に実際に動いた金額を書き入れることです。手順は次の3つだけです。
- その週の実際の口座残高・現金残高を確認し、週末残高のマスを実績で上書きする。
- 見込みで書いていた入金・支払いが、実際にはいくらだったかを直す。
- 翌週以降の予定に、新しく分かった支払い(臨時の仕入れ、税の納付など)を足す。
更新すると、危険週が前後することがあります。たとえば代替決済に切り替えて入金が早まれば危険週は後ろへずれ、逆に想定外の支払いが増えれば前へ動きます。見込みの数字と実績の数字は、うすい色や「予定」の印で区別しておくと、混ざりません。全東信の別枠は、回収の連絡が管財人から来るまでゼロのまま置いておき、動かさないのが安全です。全東信固有の手続き日程(債権届出期限や債権者集会など)は本記事作成時点で公表されておらず、回収の時期を表に織り込むことはできません。
数字が苦手な人向けのコツ
きれいな表を作ろうとしないことです。大事なのは体裁ではなく、(1)今の残高が出発点にあること、(2)入金と支払いが同じ日付軸に並んでいること、(3)全東信の未入金が別枠になっていること、の3点だけです。Excelがなくても、方眼紙やノートに手書きで十分です。まずは4週分、鉛筆で埋めてみて、消しゴムで直しながら育てていく――そのくらいの気軽さで始めて構いません。
よくある誤解
誤解1:残高が増えている週があるから、うちは大丈夫。 週ごとの残高は、支払いが重なる週まで見ないと判断できません。給与・家賃・返済が集中する週で必ずマイナスが出ないかを確認します。上の例でも、第3週までは黒字に見えて、第4週で初めて不足が出ました。
誤解2:未入金も右端に書いたのだから、いざとなれば足せばいい。 別枠は「今は足さない」ためにあります。足してよいのは、管財人からの通知で回収額と時期が確定したときだけです。
誤解3:一度作れば当分そのまま使える。 実際の入出金は毎週ずれます。更新しない表は、危険週を見落とす原因になります。週に一度の上書きをセットで運用します。
よくある質問
Q. 何週間分を作ればいいですか。
当面の資金ショートを見るなら、13週間(約3か月)を週単位で置くのが目安です。この記事では説明のために4週で示しましたが、実際は同じ形を13週まで横に伸ばしてください。落ち着いたら月単位に戻して構いません。
Q. 未入金額がまだ正確に分かりません。別枠は空でもいいですか。
分かる範囲で入れ、推定の行には「推定」と明記します。別枠は本文の合計に影響しないので、後から正確な数字に差し替えても危険週の計算は崩れません。確定した金額の出し方は全東信の未入金額はどう計算する?を参照してください。
Q. この表を持って行けば、融資は受けられますか。
融資の可否・金額・条件は金融機関や公庫の審査で決まり、表があるから受けられるというものではありません。表は、現在地と不足額を正確に伝えるための道具です。準備が整っているほど説明はしやすくなります。
ケン「やってみたら、月末の週だけドンとマイナスやったわ。ここが危ないっちゅうことやな。」
ナオ「そこが分かれば十分です。『月末に、いくら、なぜ足りないか』を言えるようにして、あとは毎週金曜に実残高で上書きしていきましょう。危険週が動いたらすぐ気づけます。」
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出典・参考
- J-Net21(中小機構)「資金繰り表を活用する」(確認日 2026年7月15日)ページ
- 食団連(一般社団法人日本飲食団体連合会)全東信の破産に関する案内(資料・資金繰り表の準備。確認日 2026年7月15日)ページ
- 日本政策金融公庫「取引企業倒産対応資金」(別枠3,000万円・国民生活事業。確認日 2026年7月15日)ページ
個別の判断は、管財人・裁判所・金融機関・税理士など担当機関・専門家へ確認してください。
